2021年03月11日

10年目。『心淋し川』(西條奈加・著)

鎮魂0311。 東日本大震災の発生から10年が過ぎました。

 新型コロナ禍が続く「」そして「これから」を考える一日でした。



 第164回直木三十五賞を受賞した『心淋し川』(集英社・刊)を読みました。
 選考・受賞の報道で“時代小説”と承知していましたが,ほとんど内容を知らずに手にしました。

 舞台は,江戸・千駄木町にある根津権現近くの「心町(うらまち)」で,そこを流れる「心淋し川(うらさびしがわ)」という小さな川の両脇に建つ長屋に住む人達の生活を描いた人情物語です。
 書名と同じ『心淋し川』が最初の話で,続く『閨仏』を読み始めると“別の話”のような感じがして,「受賞作は最初の話かな…」と思ってしまいました。
 でも間違いでした。連作の短編集で,心に沁みる人情物語でした。

 最初は,心町で生まれ育った19歳の ちほ の話です。そして,ちほ,おりき,稲沢,与吾蔵,ゆか,るい,吉,富士之介,明里,よう,楡爺…の人生と思い絡み合います。
 それぞれの暮らしに,差配の 茂十 が語りかけ,それが支えとなります。

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 6編をまとめて読むのも,選んで読むのも,それぞれに合った楽しみ方でよさそうです。
 心に沁み入った話は…。
 あなたには…。

 読みごたえのある一冊でした。



 読書メモ
○ 誰の心にも淀みはある。事々を流しちまった方がよほど楽なのに,こんなふうに物寂しく溜め込んでしまう。でも,それが,人ってもんでね。
○ 弱い者は踏みつけにし,生意気な者はしつけと称して甚振る。それが世のあたりまえだった。
○ たしか,書物の名は……ああ,そうだ,『当世風流地口須天宝』だ。
○ はじめましょ/めましょを見ればなりそな目もと/めもと近江の国ざかい/ざかいちがいのお手まくら/まくらの花はあすかやま
○ 差配は,一冊の本を差し出した。むつかしい漢字が並んでいて,与吾蔵にはとても読めない。
○ 子供のためと口にする親ほど,存外,子供のことなぞ考えてないのかもしれないなあ。
○ 思えばこの心町では,女郎上がりをあてこすられることは滅多になかった。
○ 『今年も蓮見の頃になり候 いつもの日刻にて』
○ これは決意なぞではない。刹那の興奮だ。それがどれほど危ういか,歳を経た者にしか見通せない。
○ よろしいですよ,旦那。何があったかきかぬが,心町の理ですから。
○ あたしはどっちでも……できれば,いてほしいかな。差配さんのいる心町が,あたりまえになっちまったから。

   目次

心淋し川(うらさびしがわ)
閨仏(ねやぼとけ)
はじめましょ
冬虫夏草(とうちゅうかそう)
明けぬ里
灰の男


【関連】
  ◇直木三十五賞(公益財団法人日本文学振興会)
  ◇東日本大震災から10年。のりこえるチカラ(3.11企画 - Yahoo! JAPAN)


タグ :読書防災

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Posted by ガク爺 at 19:00│Comments(0)日記読書
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