2023年08月27日

『隠居おてだま』(西條奈加・著)

庭0827。 表紙に、好々爺とみえる座した老人(隠居)と楽しそうに跳ねる子供、裏表紙に細工職人の夫婦が描かれた『隠居おてだま』(角川書店・刊)が気になって手に取りました。
 著者の作品では、第164回直木三十五賞を受賞した『心淋し川』(集英社・刊)を読んで以来です。

 出版社は、
 優雅な余生を送るはずの隠居家は、今日も子供たちで大にぎわい。
 老舗糸問屋・嶋屋元当主の徳兵衛は、還暦を機に隠居暮らしを始めた。
 風雅な余生を送るはずが、巣鴨の隠居家は孫の千代太が連れてきた子供たちで大にぎわい。
 子供たちとその親の面倒にまで首を突っ込むうち、新たに組紐商いも始めることとなった。
 商いに夢中の徳兵衛は、自分の家族に芽吹いた悶着の種に気が付かない。
 やがて訪れた親子と夫婦の危機に、嶋屋一家はどう向き合う?
 笑いあり涙ありの人情時代小説『隠居すごろく』、待望の続編!
と紹介しており、隠居は老舗糸問屋の元当主であり、隠居家に孫と友達が集って、賑やかな隠居生活です。

 しかし、その隠居生活に…。
 元当主の“商才”を活かすときが…。
 老舗糸問屋 嶋屋の面々が…。
 大内儀のお登勢が…。
 末娘のお楽が…。
 の千代太が…。

 隠居 徳兵衛を中心に、その家族が織りなす江戸人情噺です。
 読みごたえのある一冊です。



 読書メモより
○ 同業というのは、厄介なものだ。親子、兄弟、そして夫婦。いずれも親や兄や夫の方が上であれば悶着も少ないが、立場が逆さになると、とたんにぎすぎすしてくる。中でも夫婦は最たるものだ。
○ 「いまは思いつきに過ぎませんが、うまく運べば、紛い物を封じる奥の手となり得るやもしれません」
○ 新規の商いには、見極めが不可欠だ。世間の流行は、時代によって築かれる大きな川に等しい。ただ流されていては、溺れるのが関の山。(略)
○ 頭の中に描いた意匠を、大きく凌駕する出来事だった。その驚きは、何にも代えがたい。
○ 「いや、悪くない
 この二の番頭にとっては、それが何よりの褒め文句だった。
○ 「私にとってはまるで、慣れぬお手玉を、三つも四つも手にしているかのように思えましてな」
○ 何かを失くして、初めて存在の大きさに気づくこともある。
 身内を失うと、佳右衛門やおはち一家の真心が、ことさらにしみる。

   目次

一 めでたしの先
二 三つの縁談
三 商売気質
四 櫛の行方
五 のっぺらぼう
六 隠居おてだま

【関連】
  ◇連載「西條奈加「隠居おてだま」」一覧(カドブン)
  ◇『心淋し川』(西條奈加・著)(2021/03/11 集団「Emication」)


タグ :読書

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Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)読書
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