2019年05月04日

みどりの日。「 文武の達人稲吉庄右衛門応貞」(つくで百話)

花0504。 今日は,国民の祝日の一つ「みどりの日」です。「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し,豊かな心をはぐくむ」とされます。

 青空が綺麗で,気持ちのよい風が吹く一日でした。
 木々は新緑が輝いています。この美しさを愛で愉しみましょう。



 『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)から「村の起原と人物」から紹介です。
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    文武の達人 稲吉庄右衛門応貞

 大和田村の旧家稲吉家三十三代の当主庄右衛門応貞は,苗字帯刀を許された郷士でありましたが,また文武両道の達人として,近郷にきこえた名士でもありました。
 武道は,愛宕流剣術,槍術,捕手術の免許皆伝の達人でありました。弓術も日置流の奥義を極めた名人でありました。時々,武者修業の武芸者が,稲吉家を訪れて,その指導を受けておりましたが,ある日,庄右衛門が窯の灰を箕に入れて畑へ撒いて,家の前まできたときに後からついてきた修験者風の武士が突然抜刀して斬りつけました。その一瞬,体をかわした庄右衛門は,素早く足払いをかけて対手を地面に倒して,その背中を脚で押さえつけて,持っていた箕を武士の頭にかぶせようとしますと,武士は両掌を合わせて,涙ながらに詫びを入れ,「汚れている箕をかぶせられると,これから法力が利かなくなるから,ぜひ御勘弁を願いたい」ど平あやまりに謝ったと云うことでした。
 何時どこで,腕だめしをせられるか,あるいは敵にねらわれるか判らないというので,平生油断なく,防禦態勢をくずさない生活をつづけていました。入浴する時にも,その木刀を浴場にしのばせていたときいております。彼は清水次郎長一家の名物男となった森の石松の身寄りでもありましたことから,清水次郎長に頼まれて,清水一家の若い衆に剣術指導をしたこともあり,慶弔の折には,清水から代表者が稲吉家を訪れるのが常でした。
 学問の修業にも熱心であった庄右衛門は,和漢の書物を読みあさりましたが,不思議な法力を体得して,当時魔術と云われたものをやりました。病気を治したり,狐つきを追い払ったり,雨乞いの雨をふらしたこともありました。ある時,伊勢参りの途中,桑名の宿屋に泊った時のことでした。宿の二階から見渡される広い水田を指さして,「この田圃を海にしでみせる。」というと,間もなく,あたり一面が海に変わり,小波がザワザワと音を立てていました。一緒に旅をしていたものも,宿のものも,びっくりしました。その頃,流行った俚謡に
 神や仏の真似ならするが大和田庄右衛門さの真似にやできぬ
というのがありました。
 稲吉家には,家伝として,いろいろの病気を治す法や,災難除けの術が伝っておりました。二,三の例をあげてみますと
○血止めの歌 手近の木の葉をとって,かんで傷口にあてて三度唱える
 血の道や血の道や父と母とのめぐり合い血の道止まれ血の道の神
○悪るい夢をみたとき 三度唱える
 夢みしや夢みしや夢の行く末尋ぬれば南天山の獏の餌となる
○山犬に会ったとき 三度唱える
 神国に人を恐れぬ畜類はわが日の本に居らぬものなり
○放牧した馬がかえらないとき 三度唱える
 たち別れ因幡の山の峯に生うる松としきかば今かえりこむ
○わが許を通りすぎる人を立寄らせる法
 天つ風雲の通路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ
 この外にも,いろいろと呪術の秘法がありましたが,これらは,庄右衛門の発明工夫したものが家伝となったものでありました。庄右衛門の魔術といわれたものの中には,今曰の催眠術も多分に存在したようにみうけられます。
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 話のなかに「清水次郎長」「森の石松」が登場します。
 石松の父を助治といい,その妻 かなが稲吉庄右衛門応貞の妹です。二人の間に生まれた長男は若くして亡くなりましたが,続いて次男の「石松」が生まれました。
 森の石松の生家は,三河国八名郡半原村堀切の山本家です。


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Posted by ガク爺 at 17:15│Comments(0)日記作手
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