2019年08月17日

「保永の三滝」(つくで百話)

滝0817。 霧のかかった朝でしたが,日中は日差しがあり暑くなりました。暑いけれども,涼しい風の吹く高原の夏でした。



 『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「川に因んだ話」から紹介です。
 この夏も,昨日紹介した“鳴沢の滝”,今日の“保永の三滝”など作手地区の滝に,涼を求める人がたくさん訪れたことでしょう。
 鳴沢の滝では,今日もグループで楽しむ人達でにぎわっていたようです。
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    保永の三滝

 作手の最高峯巴山を水源とする巴川は,保永地内を西から東に流れています。この流れの渓沿いに見代部落があります。ここには滝の入,滝山などという字があり,部落の一部には,通称滝ばたという所もあります。お寺は,北滝山良雲寺といいます。兎に角,見代部落と,滝とは因縁浅からぬものがございますが,これは,部落の西ニキロメートルくらいの所にある見代の滝に関係があるものと思われます。この滝は,村誌にも保永の三滝として誌されております。
 保永の三滝は,一の滝,二の滝,三の滝と三つの滝が連っている大きなものであります。
 一の滝の滝壷は深く青澄んでおり,昔から底が知れないといわれておりました。昔は,鴛鴦の群れが,どこからか飛んできて,悠々と游いでおり画にかいたように静かにも美しい別天地でありました。ここには,蛇穴という岩穴があります。昔から,この蛇穴に大蛇が棲んでいるといわれ,村の人たちは,恐れて近寄りませんでした。この蛇穴は,新城市稲木の大洞山泉竜院の井戸につづいているといわれ,大蛇は,一の滝とお寺の井戸の間を往復しておりました。
 ある時,泉竜院の楼門を改築することになりまして,多勢の人夫たちが忙しくたち働いておりました。その手伝い人夫の中に,誰も顔を知らない綺麗な娘が一人まじって手伝っておりました。工事の見回りに来た和尚さんが,その娘のそばへ近よるとみる間に,携えていた太い杖で,娘の肩を発止とたたきました。すると,美しい娘は,忽ち大蛇となって,楼門の屋根をこえ井戸の中へ逃げこみましたので,和尚さんは秘法を使って,大蛇を井戸の中へ封じこんでしまいました。このお寺には現在でも「開かずの井戸」といって,大きな石の蓋をした井戸があります。一の滝の大蛇は,この中に封じこまれているということです。
 これ以来,大蛇はみられなくなりましたが,それ以前には,滝の付近で草を刈っていた人が「ザアッ」と草の上を辷る音をきいたり,山道を横切る大蛇の尾の部分をみたなどという人が,時たまありました。
 この保永の三滝は,現在でも,人跡稀な秘境でありまして,一人では近寄り難い鬼気迫るようなものがある別天地でありますが,近い将来に,作手名所として開発される計画も樹てられております。
  (権田昌夫)
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【「つくでの昔ばなし」掲載】
  ◇「保永(やすなが)の三滝」
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Posted by ガク爺 at 22:00│Comments(0)作手
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