2019年07月09日

「滝上明神様」(つくで百話)

花0709。 今朝,窓を開けると“真っ白”でした。霧が広がっていました。
 雨模様の天候で,細かな雨が降っていました。
 日中は雨がなく,傘のいらない日でした。



 『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「文化財と信心」から紹介です。
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    滝上明神様

 新城から徳定をへて,御前石峠を越え,杉平へおりて,上小林,鴨ヶ谷,川尻,中河内を通って東加茂郡下山村から足助町へ通じる街道は,徳川時代から明治の末期までは,作手と新城を結ぶ重要街道でありまして,毎日二,三〇頭の馬が荷を積んでは通ったものでした。今,作手南中学校の校舎のある辺は,ちょっとした平地の草原でありました。ここで馬方は馬の靴(藁で編んだ草鞋のようなもの)をとりかえて,一服するのが,日常のならわしでありました。とりかえられた古い馬靴が,小さい小屋位の高さにまで積まれているのをいつもみうけたものでした。
 さて,杉平の部落から御前石峠へ向って登ると,五百メートルくらいの所とニキロメートルくらいの所に大きな石があって,その真中が割れて,一センチくらいのすきがありました。このすき間に白と茶の横縞の小さい蛇がおりました。頭と尾はみられませんが,胴体だけは,よくみうけられました。上の明神様,下の明神様といって,おまつりしてありましたが,一つの明神様が,或る時には上に,或る時には下におられるのだとの説もありました。この岩の上には,常緑の樹がおおいかぶさっており,すぐ下を谷川が流れておりました。
 明神様の附近には,白や赤の小さい幟が沢山たてられており「己の年女」「午の年男」などと書き,奉納した人の名前なども書いてありました。
 明神様は霊験あらたかと云うので,随分遠方からも参詣する人があり,谷川へ入って水垢離をとって,斉戒沐浴をして,信心する熱心な人の姿もよくみうけたものでした。
 幕末の頃,新城市の石田に某と云う博徒の大親分がありました。作手で堵博の開帳があった日の夕方,乾分をつれて,一杯機嫌で元気よく,明神様の前を通りかかりました。ちょっと明神様をのぞいて,
「何だ,こんな小さい蛇が明神様なんて笑わせらァ。」と云って,腰にさしていた小刀を抜いて,岩の割れ目へつっこんで,明神様を傷つけました。
 それから山を登って行って,御前石峠を越える頃になると,雷を伴った大夕立がやってきました。びしょ濡れになった博徒の親分が新城の橋向の曲り角へ差しかかると待ち構えていた繩張り争いの博徒に斬りつけられて,無残な往生を遂げました。当時の人たちは,明神様の神罰だと噂されたと云うことです。
 明治の末の頃,弓木のわさと云ふ婦人は,友達と新城へ行くときに,明神様の前を通りながら「明神様は小さな蛇じやないか。」と馬鹿にしたような口吻をもらしました。その日の午後,帰り途に,大蛇が明神様の前に横たわっていたので,びっくりして,般若心経を唱えながら,和田の方まで,大廻りをして家に帰りました。
 また昔碧海郡の上郷村のお百姓さんたちは,旱魃で水田が干あがってしまいましたので雨乞のために明神様に祈願しました。家へ帰ると,盆を覆えしたような大雨が降って,枯死寸前の稲は忽ちよみがえったということでした。
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 梅雨前に,宇連ダムの貯水率が0%となり節水規制がありました。こんなときに,“明神様に雨乞い”するとよいのかもしれません。
 どこかで行われていたのかな…。

【「つくでの昔ばなし」掲載】
  ◇「滝上(たきがみ)の明神様」
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Posted by ガク爺 at 19:30│Comments(0)作手
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