2019年09月03日

「竜頭山」(つくで百話)

蝶0903。 天気の良い日でした。
 最近は“”を感じる涼しい風が吹いていましたが,今日は風も弱く,暑さを感じ,動いていなくても汗の出る一日でした。



 『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「山に因んだ話」から紹介です。
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    竜頭山

 作手郷の西南端に聳える本宮山に対して,東北隅に聳える竜頭山は標高七五二メートル,竜が頭をもたげたような異様な姿をしています。山頂から少し下ると杉檜の造林が緑も濃く繁茂していますが,山巓は花崗岩塊でおおわれています。ここは,作手村,鳳来町,設楽町の三町村の接点になっています。
 竜頭のお山に霧がかかると,雨の前兆といわれ,昔の人は,竜頭山に棲んでいる竜が雨を降らせるように考えておりました。古代民族の間には,巨岩信仰の風習がありましたが,竜頭山頂の巨岩怪石に近寄りますと巨岩の霊気とでもいうようなものがひしひしと肌に迫っでくるのを覚えます。竜頭山頂の洞穴にはこくぞう菩薩がおまつりしてあります。いつの頃か,この附近で折れた太刀が発見されたことがありました。この竜頭の山神に奉納されたものでありましょう。
 ある年,ある男が,「あの岩山に登ると罰があたるなんておかしいぞ。」といって,独りで登山しました。いつまで待っていてもおりてこないので村の人が探しに行くと,山頂の岩石の下の松にひつかかって死んでおりました。
 大昔の頃は,竜頭山に棲んでいる大蛇は,冬の最中でも岩の上にいたということです。大輪村のある男が,寒中に山を登ってみにゆくと,確に大蛇がいましたが,その背中は凍傷ではれあがり,皮がところどころ破れて,大蛇はブルプル慄るえておりました。
 「お前は馬鹿だなあ,瘠我慢ばやめて,南の暖い国へ行くのが利巧だぞ」というと,大蛇は「ウンそうだった」とうなずいて,大空に向って,大きな唸り声を出しますと,忽ちむら雲がおりてきたので,それに乗って南の空へ飛び去ったといわれております。
 竜頭の神様のお使は蝮だといわれております。蝮は沢山いますが,構わない限り,人にくいつくことはありません。しかし,わるさをすると幾十,幾百の蝮が群がりおそってきて手におえないそうです。
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 昭和46年に発行された『つくで百話』(作手高原文化協会)から記事(原稿)の紹介が「川に因んだ話」「山に因んだ話」の章に入り,次の「怪奇物語」が最後の章となります。
 ここの記事は,昭和61年に発行された『つくでの昔ばなし』(作手村文化協会「あめんぼ読書会」)の参考文献にもなっています。
 記事を掲載に合わせて,「つくでの昔ばなし」を読み直すと,“子供に伝える”文章に,違った気づきがありました。こちらも,どうぞ。

注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話」〉で

【関連】
  ◇『つくでの昔ばなし』


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Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)作手
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