2020年10月04日

『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(志賀内泰弘・著)

花1004。 曇り空の一日でした。

 この夏に子供達が取り組んだ“算数・数学の研究”のまとめを読ませていただきました。
 「そうか」「なるほど」「ほんとに
 今年の短い夏休みでしたが,「学問する楽しさ」「追究する面白さ」を感じて過ごせたようです。ありがとうございました



 先日,志賀内泰弘氏から「号外 徒然草子」のお知らせと書籍2冊を送っていただきました。
 その一冊『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(PHP文芸文庫)です。
 これは,月刊『PHP』に連載の小説が書籍化された連作短編集で,以前に紹介した作品の続編です。

 舞台は,祇園の“一見さんお断り”の甘味処「もも吉庵」,その女将が,代々続いたお茶屋を畳んで甘味処を開いた もも吉 です。
 店の席に着く,美都子隠源隠善おジャコちゃんが聞き語る,祇園で生きる奈々江朱音の周りにみる“生き様”に心が揺れます。

 前作で印象に残る言葉が,第一話で再び語り掛けられます。
「ええか,朱音たん。仕事というもんは,頑張るもんやない。気張るもんや。『頑張る』と『気張る』,似ているけど違うんや」
 と,『頑張る』というのは,『我を張る』こと。つまり自分一人の頑張り,独りよがりのことだという。それに対して,『気張る』いうのは,『周りを気遣って張り切る』ことなのだそうだ。
 そして,もも吉庵で“今を語った人”に,もも吉は
 一つ溜息をついたかと思うと,裾の乱れを整えて座り直す。もともと姿勢がいいのに,いっそう背筋がスーッと伸びた。帯から扇を抜いたかと思うと,小膝をポンッと打った。ほんの小さな動作だったが,まるで歌舞伎役者が見得を切るように見えた。
と居ずまいを正し“言葉”をかけます。
 その言葉が,悩みを抱えた人々の心を癒します。
 その言葉は,読んでいる“わたしの心”へも伝わってきます。


 *第一話の朱音。
 今はまだ,そのことを知る由もない。
 あいかわらずのマイペースで,店の一番奥で額に汗をかきながら商品を,ただただ黙々と包装する朱音だった。
 *第二話の香織と佐保。
 「ほんまや」「ほんまにきれいやなぁ」と言い合い,佐保と健三,香織と耕次,そして佐市,総三郎夫婦が空を見上げる。
 みんなの笑顔が一つになった。もも吉は思った。「もう大丈夫や」と。
 *第三話の太一。
 気付くと,頬を熱い涙が伝わっていた。(略)
 椿がくるくると回った。
 それはまるで,金屏風の前で踊る舞妓のようだった。
 *第四話の奈々江。
 刹那,お爺ちゃんが微笑んだように見えた。
 奈々江は頬に伝う涙も気にせず,ただただ無心に舞った。
 *第五話の勇。
 お囃子の音が勇の心の弦をやさしく撫でた。
 その瞬間,頬を伝わったひと雫が,小鈴の頬にポツリと落ちた。

 もも吉の語った言葉は…。
 その言葉が,あなたも聴こえます。


 読書メモ
○(冬至の話から) そこでここに『ん』の二つつくもん七つ用意したんや。みんなで当ててみぃ。
○ 昔からよう言いますやろ。隣の芝生は青く見えるって。
○ 人は,悪いことがあると,気が弱くなるもんどす。そやから迷信みたいなもんを,よけいに信じたくなるんどすなぁ。
○ 昔から,秘すれば花と言いますなぁ。もし,知ってしもうたら,聞いてしもうたら,辛い思いをする人がおるんやないやろか。人の心を苦しめてまで,知らなあかんことはないのと違いますやろか
チラシ1004。
   もくじ

第一話 年暮れて 今日の片隅華が咲く
第二話 秘め事や 桃の節句のものがたり
第三話 行く春を 惜しみ零れる落椿
第四話 ふるさとを 偲んで踊る京の舞
第五話 都大路 涙ににじむ山と鉾


【関連】
  ◇志賀内 泰弘(Facebook)
  ◇悩みがあったらおいでやす!感動連作短編集『京都祇園もも吉庵のあまから帖』をおすすめしますよ!(YouTube  文学YouTuberベル)
  ◇ブックウオッチング:『京都祇園もも吉庵のあまから帖2』 志賀内泰弘さん(毎日新聞)
  ◇「もう何もおへん」全焼の祇園お茶屋、おかみは前を向く [京都花街マガジン](朝日新聞デジタル)
  ◇月刊「PHP」(PHP研究所)


【これまでに紹介した「志賀内泰弘氏の著書」】
  ◇『101人の、泣いて、笑って、たった一言物語。』(志賀内泰弘・監修)(2020/05/30)
  ◇『書斎の鍵』(喜多川泰・著)(2019/04/23)
  ◇『365日の親孝行』(志賀内泰弘・著)(2019/11/27)
  ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘・著)(2019/10/23)
  ◇『気象予報士のテラさんと、ぶち猫のテル』(志賀内泰弘・著)(2019/08/18)
  ◇『眠る前5分で読める 心がスーッと軽くなるいい話』(志賀内泰弘・著)(2019/04/10)
  ◇『5分で涙があふれて止まらないお話』(志賀内泰弘・著)(2017/06/22)
  ◇『ギブ&ギブの法則』(志賀内泰弘・著)(2016/08/03)

  こちらもどうぞ→☆カテゴリー「いい話の図書館」から
志賀内1004。


タグ :読書

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Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)読書
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