2021年05月22日
『ジュリーの世界』(増山実・著)

川は水量が多く“荒れて”いました。また,山道に法面から流れ出る水は,夕方になっても続いていました。昨日まで大雨だったことが現れていました。
夕方,「テッペン カケタカ」の鳴き声がよく聞こえました。雨が上がったからか,気候がよくなったか…。美しい鳴き声に聴き入りました。
ホトトギスが,季節を楽しんでいます。
明日は,どんな声が聞こえるかな。
「いい話の図書館」で27冊目の図書『ジュリーの世界』(ポプラ社・刊)です。
本に恋する小林店長は,「本に恋する店主の呟き新聞」に
実はこの本は,出来たての新刊である。3月21日にゲラを読み,半日ずつぐらいあけて,3回読んだ。1回目より2回目,2回目より3回目と読むたびに作者からの深く熱いたくさんのメッセージを感じた。とメッセージを載せています。
「今日は過去と繋がっている。そして未来は今日という日と繋がっている。そう思うだけで毎日の生き方がちょっと変わる」
今までの日常が変わった時だからこそ,見つめ直したいことがある,考えたいことがある。わたしはたぶん,これから何度もこの本を手にすると思う……
届いてから積読でしたが,読み始めると“ジュリーがいる京都の街”に魅せられ,読み続けました。「1回目より2回目,2回目より3回目と…」と言う店長の感覚に近づけそうでした。
語りは,2020年2月5日の早朝,“花束を持った男”が祇園四条通りを東に向かって歩いているところから始まります。
そして,1984年2月5日,“彼”が八坂の赤い門をくぐったところで終わります。
1979年の春,三条京極交番に赴任したばかりの新人巡査 木戸浩介が,ひったくりにあったと血相を変えて駆け込んできた女性から「河原町の,なんたらって?」”と浮浪者のことを聞きます。
浮浪者から“被害を受けた”と言うから取り締まりに出ようとすると,指導教官の山崎巡査長から止められます。
どうして…。それは…。
かつてこの街で彼と人生を交錯させた人々は、やがてその「真相」を知る。木戸巡査の出会い,河原町のジュリーのいる街,その時代と空気…。
人間の自由と尊厳を昭和の時代と令和の現代に浮かび上がらせ、人が「物語る」ことの意味を問うた感動作。
それらが“○○”を見せてきます。
あなたが見る“○○”は…。
読書メモより
○ 街は変わる。そして,人も。八坂神社の赤い楼門だけが昔と変わらずにそこにあった。
○ 「おまえの話は,一見,筋が通ってそうで,通ってないな。けど,人が仕事を決めるきっかけ,ちゅうもんは,案外,そんなもんかもしれん」
○ 「そうや。こっちの心がツルツルやと,そういうのは,入ってけえへん。ツルツルのステンレスの板は,水を吸い込まんやろ。なんでもさっと流してしまう。表面がざらついた木の板は,水を吸い込む。常に心をそういう状態にしておくことや。木の板の心を持つことや」
心をざらつかせる……。木の板の心を持つ……。
○ 「正体の知れないものが,自分の視線の及ぶ範囲に在る。人は,その不安に耐えられへんねん。何か得体の知れないものを見つけた時,人はその不安から逃れるため,名前をつける。名付けることで (略)」
○ 彼には「影」がない。だからこそ人は彼を見て,自分自身の「影」を彼自身に仮託して,物語を作る。
○ 「それこそ,新米なんで,ゲタ履かせてくれたんです」
「ゲタでもこっぽりでも履いとき,履いとき。若いうちは」
○ 「今,子供たちの鬱屈は,何か別の,とんでもない『闇』の方に向かっているんやないかな」
○ 「この島に来て,気づいたことがある。たったひとつの『緑』っちゅうのは,人間が勝手にこしらえた名前や。ほんまの『緑』は (略)」
目次
プロローグ (2020年2月5日)
第一話 花の首飾り(1979年 春)
第二話 坂の向こう
第三話 夜の猫たち
第四話 鳥の名前(1979年 夏)
第五話 熱い胸さわぎ
第六話 ジュリーと百恵(1979年 秋)
第七話 黒と白の季節(1979年 冬)
第八話 四十年後(2020年1月18日)
第九話 真珠貝(1944年)
第十話 再会(2021年 春)
エピローグ(1984年2月5日)
あとがき
【関連】
◇増山実@ジュリーの世界 (@yusya_dengon)(Twitter)
【「いい話の図書館」】
◇最近紹介した本
◇『母からゆずられた前かけ』(宮川ひろ・著)(2021/04/20)
◇『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(藤尾秀昭・監)(2021/03/02)
◇『おもかげ』(浅田次郎・著)(2021/02/08)
◇『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(川上徹也・著)(2020/12/20)
◇『未来のだるまちゃんへ』(かこさとし・著)(2020/12/09)
*以前に紹介した本は
☆カテゴリー「いい話の図書館」から
「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,苦しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。
そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。
◇いい話の図書館【申込】
◇小林書店さん (@cobasho.ai)(Instagram写真と動画)
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