2019年09月09日
重陽の節句。『獅子ケ森』(つくで百話)

起源となる中国では,奇数は縁起のよい“陽の数”とされ,一番大きな陽の数である「九」が重なる日であることから,「重陽」と呼ばれます。
数年前の話ですが,この時季に,
「子供に,秋の花といえば何がある」と尋ね話をしていて,「菊」の名は出たのだけど,花を知らない(見たことがない)と言う子がいて,驚きました。と,地域の方から聞きました。
子供が,実際に“見たことがない”のではないでしょうが,「これが菊の花」と認識できていなかったようです。
似た話で,理科の授業で「ツユクサを採ってきて」と指示したら,「咲いてない」と返事しましたが,校内にも通学路にも咲いていましたし,当地では各所に見られる花でした。
このように答える子供達に知識がないのではありません。たぶん“学力は高い”と思います。
それなのに,こうした反応になるのは,体験に裏付けられた知識や知恵として身に付いていないからだと,そのとき思い,話をしました。
“自然が豊かな土地”に暮らしながらも,“生活”のなかで触れたり使ったりすることが少ないのだろうと想像します。
あれから数年,子供達の体験は増えたでしょうか。
『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「山に因んだ話」から紹介です。
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獅子ケ森
作手郷の西端を南北に走る連山の中央部に標高七二八メートルの獅子ケ森があります。その頂上に,落雷で損傷した檜の古木が高く聳えておりました。この獅子ケ森を象徴する古木は,鳳来寺山,段戸山,岩古谷,伊勢神峠,秋葉山など遠隔の山々からも望見されました。
この獅子ケ森の頂上には行者の石像が安置されておりました。また,それより少し降ったところに獅子神社がおまつりしてあります。その附近に三峯神社として,加賀の白山神社,越中の立山神社,富士の浅間神社もおまつりしてあります。
古来,時たま,獅子ケ森の頂で怪火が滔々と燃えることがありました。山下の村人たちは天狗様の火として,恐れおののいたものでしたが,とにかく獅子ケ森は,作手郷の霊山の一つとして,村民畏敬の対象でありました。
昭和二十九年,日本電源開発公社のマイクロ電波通信中継所が開局されまして,近代的感覚の建物と大空に聳え立つ三十五メートルのマイクロ大鉄塔は,新時代の獅子ケ森の象微として,電波の世界に大きくクローズアップすることになりました。
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子供の頃,“獅子ケ森の頂で怪火”ではなかったが,獅子ケ森の山頂付近には“不思議なものが飛行する”という話がありました。
その頃は,天狗という話ではなく,宇宙からのUFOだとか地底世界の乗り物といった話・噂でした。
あの“火・光”は,何だったのでしょうか。
注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話」〉で
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