2024年04月16日

8-7 少年の日のため息 (昭和に生きる)

花0416。 予報が“雨が…”ち伝えていましたが、天気のよい中で活動できた一日でした。

 新年度になり、新たに「学童保育放課後児童クラブ)」を利用する家庭があります。地域によって呼称は違っていますが、放課後や学校休業日に子供が安心して過ごせる“遊び”や“生活”の場を提供しています。
 昔、「鍵っ子」と呼ばれる子供達がいましたが、今は…。
 ちょっと気になりました。



 故・渥美利夫氏が還暦の年に著した『昭和に生きる』(1987(昭和62)年刊)からです。
 渥美氏の教育実践、教育論は、“昔の話”ですが、その“”そして“”となるものは、今の教育に活きるものです。これからの教育を創っていくヒントもあると思います。

 この項は、「第四章 ハナノキの下で──教育断想」から構成されています。
 この「少年の日のため息」は、渥美氏の生き方に影響を与えた少年時代のできごとを綴っています。
********
    ハナノキの下で──教育断想

    3 少年の日のため息
      ──CK「ブッポウソウ」放送をめぐって
(つづき)
      少年の日のため息
 昭和8(1933)年に国定教科書が全面的に改訂された。8年に一年生、9年に二年生と順次改訂されて、13年に六年生となるいわゆる第四期国定教科書といわれるものである。装丁も一変し、色刷りで“サイタ、サイタ、サクラガサイタ”の“サクラ読本”である。
 昭和12(1937)年──ネコやなぎの芽もふくらみ、小川のせせらぎも春の訪れを知らせる早春、3月の初めのある日、新城の今泉書店のおじさんが、新年度の新しい教科書を販売するため、門谷小学校を訪れていた。もうじき5年生を迎えようとしていた竜介少年も大ぜいの友だちたちと一緒になって新5年生の教科書を手にしていた。今の子どもとちがって、当時、村には本屋はなく、雑誌を買おうと思えば、新城まで出なくてはならなかった。そのころ「少年倶楽部」には、田川水泡の「のらくろ」島田啓三の「冒険ダン吉」の漫画が連載され、子どもたちの拍手喝采で迎えられていた。とくに「のらくろ」は、軍隊に入った野良犬が手柄をたてるごとに二等兵から一等兵、伍長と階級が上り、上がっていくごとに人気を集め、子どもの雑誌における漫画の地位を決定づけるものであった。
 子どもの魅力の対象である「少年倶楽部」を毎月買ってもらえるという子は、クラスに一、二名であったから、ほかの子どもはその子の機嫌をとるより手はなかった。
 したがって新しい教科書を買ってもらって喜んだものである。その教科書の読めない字をとばして読んでいった。そしたら、“十三、仏法僧”という活字が目にとびこんできた。大急ぎで読んでいった。ワクワクする気もちを抑えて読んでいった。竜介少年は読み終ると同時に、大きなタメ息をついた──。
 教科書の文章は、1,200字ほどの小文である。ブッポーソーとなく鳥は、かつて“その声のとおり仏法憎”と誤解されていたが、ラジオの中継放送がきっかけで、コノハズクとわかったことを述べたうえで、さらにつぎのように言っている。
 「其の結果、いはば我が国に二つの名鳥が出来たことになりました。一つは渡り鳥として珍しい仏法僧です。其のはでな色彩から見てもわかるように元来熱帯地方の鳥で、それが夏の間だけ日本へ飛んで来るのです。いま一つは、見るからにへうきんな顔をした、かわいらしいコノハズクです。これは非常に珍しい鳥といふのではありませんが、しかし五、六月の頃「ブッポーソー」と鳴く声は何といっても美しい、深みのある神秘的な声です……。」
 教科書に載ったことは、竜介少年にとってもうれしいことであった。しかし、竜介少年がどうしてもがまんできなかったことは、教科書の文章のなかに“鳳来寺”の文字が一度もでてこないということと、コノハズクと認めたくない気持ちをあざ笑うように、はっきりとコノハズクと断定している二点であった。“仏法僧の里”の村びとたちも竜介少年と同じ思いに怒りをあらわにしていたのである。
(つづく)
********
 注)これまでの記事は〈タグ「昭和に生きる」〉で
 注2)本文内で、縦書き漢数字で書かれている数値を横書きに改めて表記した箇所、年号に西暦を追記したところがあります。


【関連】
  【関連】
  ◇小学国語読本 尋常科用 巻九(広島大学図書館 教科書コレクション画像データベース)
読本s-0209。



同じカテゴリー(先人に学ぶ)の記事画像
「先人に学ぶ」に学んで 【リンク集】
提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(4)
提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(3)
提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(2)
よるののうか。 提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(1)
提言10 もう一つの学校…数チャレ教室(3)
同じカテゴリー(先人に学ぶ)の記事
 「先人に学ぶ」に学んで 【リンク集】 (2024-09-30 15:15)
 提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(4) (2024-09-20 17:00)
 提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(3) (2024-09-19 17:00)
 提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(2) (2024-09-13 17:00)
 よるののうか。 提言19 「ふるさとを歩く」土曜子ども教室(1) (2024-09-12 17:00)
 提言10 もう一つの学校…数チャレ教室(3) (2024-09-05 17:00)

Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)先人に学ぶ
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。