2019年02月02日
『1R1分34秒』(町屋良平・著)

右の花が“美しく咲く”時期となりました。
ご覧になったことがありますか。
どこで見られるのか,ご存じですか。
今年も綺麗に咲いています。出かけてみませんか。
今回(第160回)の芥川龍之介賞は,『ニムロッド
その一冊,『1R1分34秒』(新潮社・刊)
主人公はプロボクサーの「ぼく」,そして登場するのは,iPhoneでぼくを撮影する「友だち」,ジムで出会った「ガール・フレンド」,トレーナーとなる「ウメキチ」,対戦相手です。
ぼくを取り巻く彼らが…。
そして,最後に,タイトルとなった“1R1分34秒”が…。
ぼくの会話。
もしかしたらもう誘われないかもしれなかった。その話がほんとうなら。
「いまのはなし,ほんとう?」
ぼくはたちどまった。
「おまえは,成功したの?」
友だちは黙っている。
「おまえは,天才なの?」
ずっとカメラを向けられている。ぼくの背後に,西陽が強烈にさしこんだ。
「応えろ」
ぼくと友だち。
ぼくの声,へんだ。きもちわるい。これは他人だ。だけど,友だちの質問と,友だちのiPhoneだけがぼくをぼくだと証している。さて,勝敗の行方は…。
「破壊の夢は,再建の夢か?」
「は?」
「破壊され尽くした世界をもういつど修正してつくりなおし神様のような話か?」
「意味わからん」
わかれよ。そうだ。そうしてボクサー的世界を毎回破壊して,一からつくり直さなければ次は勝てない。
出版社の内容紹介では,
なんでおまえはボクシングやってんの?と。
青春小説の新鋭が放つ渾身の一撃。デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。
考えすぎてばかりいる21歳プロボクサーのぼくは自分の弱さに、その人生に厭きていた。長年のトレーナーにも見捨てられ、変わり者のウメキチとの練習の日々が、ぼくを、その心身を、世界を変えていく――。
ボクシングと対峙していく“ぼく”の心情,葛藤,それがトレーニングの様子とともに描かれています。
この作品の評価に,ボクシングへの興味が関わるような気がしますが,作品の描く世界で“一緒に”心身のトレーニングをしてみませんか。
【関連】
◇町屋良平 (@cori_uno)(Twitter)
◇芥川賞受賞者一覧(公益財団法人日本文学振興会)
◇直木賞・芥川賞受賞作一覧