2021年10月01日
『興福寺の365日』(辻明俊・著)

実りの秋。先日から“新米”になりました。これまでも美味しくいただきましたが,新米はさらに美味しゅうございます。大地の恵みに感謝
暦や風習はもちろん,制度など“今日から変わる”ことがいろいろあるようです。知らなかった,気づかなかったということのないよう,行動の前に確認しておきましょう。
「いい話の図書館」で32冊目の図書『興福寺の365日 (DVD付き 御仏・祈り・四季を綾なす映像66分)』(西日本出版社・刊)です。
本に恋する小林店長は,「本に恋する店主の呟き新聞」に
興福寺の執事である辻明俊氏の著書である。初めは宗教書と思っていた。確かに法相宗・興福寺の歴史を語らなければ,著者の思いは伝わらない。しかし,その中から,時間に追われて真のゆとりを持つとはどういうことか,生きる覚悟とは何か,立ち止まって考える時間を与えられた。人生のエッセイ集だと思います。とメッセージを載せています。
奈良公園で賑わう“観光地”の一つである興福寺で,五重塔や北円堂,阿修羅像,仏頭など見どころがいくつも思い浮かびます。そこが信仰の場,祈りの場であることを忘れがちです。
本書は,興福寺の執事が,その歴史を語り,その魅力,そして人の生き方を語っています。
興福寺の今の姿(印象)は,昔からあったわけでなく,先人が一つ一つ創りあげたものであること。
古(いにしえ)の技と人の営みが,今そして未来に活きていること。
“えにしの糸”が紡ぐもの。
正しい文化や習わしを伝えること。
……
著者が体験したこと,そして生きてきた日々に,今とこれからを考えさせられます。
著者の言葉と写真,そして映像(DVD)が,改めて興福寺を訪れ,その空気を味わいたくなります。
みなさんにお薦めの一冊です。
読書メモより
○ 思えば入山したてのあの頃は,何もかも物事がシンプルだった気がする。煩わしい事務仕事などはほとんどなかったおかげで(略),今よりもお坊さんらしい生活をしていたはずだ。
○ 四度加行…十八道行・金剛界法・胎蔵界法・護摩法の四種からなる修行。(略) 興福寺でも一定期間修めることが定められている。
○ (略) そのホトケさんは“のっぺらぼう”のようにお顔が無かった……。「このお地蔵さん,みんながお参りする所にお祀りして,ちゃんと手を合わせ続ければ必ず顔が浮かび上がってくるわ」。
(略) 驚いてそのことを伝えると「あと半年もすれば,くっきり表情がでてくるで,ホトケさんも喜んでいる」そう言ってにっこり笑われた。
○ 「秘すれば龍なり。秘せずば龍なるべからず」。秘してそれを証明していることば一つある。現在の(略)
○ 堂内に安置されている御像への影響も先々懸念される。(略) 空気中に汚染物質が混入している外気の侵入を防ぐことは至難である。(略) お堂の中に仏像がいなければ宗教空間としての意義を失ってしまう。
○ この先,正しい文化や習わしを伝えることを怠れば,“ほんまもん”が何か分からなくなる。
○ 今すぐでなくても,私たちの世代で基準の見直しを希求する支度を始めたい。
○ 一人一切人 一切人一人

目次
はじめに
興福寺のこと
興福寺境内図
興福寺周辺図
興福寺と私と修行
何でもない日常
ちょっと不思議な話
日々の歩みから思うこと
至宝を受け継ぎ,次世代へ
興福寺の今と昔そしてこれから
写真で巡る興福寺
興福寺略年表
【関連】
◇法相宗大本山 興福寺
【「いい話の図書館」】
◇最近紹介した本
◇『花は咲けども噺せども』(立川談慶・著)(2021/08/21)
◇『ベランダに手をふって』(葉山エミ・作/植田たてり・絵)(2021/08/04)
◇『風は山から吹いている』(額賀澪・著)(2021/07/15)
◇『人生に、エールを。』(志賀内泰弘・編・著)(2021/06/14)
◇『ジュリーの世界』(増山実・著)(2021/05/22)
*以前に紹介した本は
☆カテゴリー「いい話の図書館」から
「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,苦しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。
そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。
◇いい話の図書館【申込】
◇小林書店さん (@cobasho.ai)(Instagram写真と動画)
◇志賀内 泰弘(Facebook)