2025年01月26日
『シルバー保育園サンバ!』(中澤日菜子・著)
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前書の主人公が“グランパ”(祖父)でした。本書の“シルバー”(高齢者)は男性も女性もありそうですが、定年退職した男性が主人公でした。
読み始めて、同じ著者の作品なのだと分かりました。「仕事だから…」を言い訳に、家庭のことを妻に任せきりにして生きてきた“旧い男性”を描いた物語でした。
何歳でも人生はやり直せる! ハートフル小説
銀治は、定年退職後に妻から離婚を言い渡され、孤独で怠惰な日々を送っていた。暇を持て余し、シルバー人材センターからの様々な仕事を担っている。ある時、保育園の草むしりの仕事が入り、担当することに。銀治は、人と接すること、特に女性と子どもは大の苦手。渋々保育園に向かうが、次々に巻き起こるハプニングに対応し、その活躍が認められた銀治は、熱烈なリクエストによりそのまま嘱託職員となるはめに。
当初は銀治を怖がっていた子どもたちもだんだん慣れてなつくようになり、人付き合いが苦手な銀治も徐々に保育士たちとも打ち解けていく。日々、子どもや周囲の人たちと接するなかで、孤独だった銀治の心には少しずつ変化が。そんなある日、定年退職後に離婚し離れて暮らす娘について、衝撃の事実を知る――。そして銀治は、自分自身が蔑ろにしてきた「本当に大切なこと」に向き合うようになっていく。長い間蓋をしていた感情が蘇り、前向きに変わっていく銀治。勇気を振り絞って行動することや、あきらめないことの大切さ、いくつになっても後悔は取り戻せるということ・・・・・・。
人生に大切なたくさんのことを笑いと共に教えてくれる、人生応援小説。
銀治は月野市のシルバー人材センターに所属する嘱託職員だ。長年勤めてきた警備会社を65歳で定年退職してから3年、暇な時間を持て余し、半年ほど前にセンターに登録した。以来、おもに家の片付けや掃除、庭木の剪定や草むしりなどの依頼を担っている。仕事一筋の生活だった銀治は、妻から定年に合わせて離婚を言い出され、妻と娘は家を出て、一人で暮らしです。
ある日、シルバー人材センターから保育園の草むしりの仕事を依頼されます。
園庭の草むしりをしているだけなのに、園児に泣かれてしまいます。
「だいじょうぶだよ、みんな。このおじさんはね悪いひとじゃないの。草むしりに来ただけ。顔は怖いし、からだもおおきいけど、それだからね」子供をなだめる保育士の言葉に、トゲを感じながらも…。
草むしりの仕事をしにきた銀治が、保育助手として保育園に勤務するようになります。
人付き合いが苦手、女性や子供との接し方が分からない銀治には、知らないこと、できないことばかりですが、周りの助けを得て、保育園の仕事を続けていきます。
「じつはね……わたしが気になったのは家のようすよりも、3歳だという弟の光喜くんのほうなんだ」自閉スペクトラムの男児の行動、保護者の言動…
「え。どうしてですか」
「銀治先生は『きょうだい児』ってことば、知ってますか」
「いや初めて聞きました」
家を出た娘のようす…
保育園での出来事、子供とのふれあい、我が子との関係…
楽しいこと、悲しいこと…
「え、顔?」“生きてる”って顔に変わっていったのは…
「うん。前はなんていうか……なにごとにも興味がないっていうか、なにがどうなってもいいやっていう諦め、いや諦めじゃないか、関心がないって顔してた」
「いまは違いますか」
「ああ、なんていうか……生きてるって顔している」
高齢者になっても、何歳になっても、前に歩み出す“勇気”をもらえる気がする「笑ホロ小説」でした。
みなさんにお薦めです。
目次
夏
秋
冬
春
【関連】
◇『PTAグランパ!』(中澤日菜子・著)(2016/10/04 集団「Emication」)
Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)
│読書
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