2025年02月12日

第40条 子どもに関する司法 (子どもの権利条約)

鳥0212。 「子どもの権利条約 (児童の権利に関する条約)」第40条「子どもに関する司法」です。政府訳から
  第40条
1. 締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての当該児童の意識を促進させるような方法であって、当該児童が他の者の人権及び基本的自由を尊重することを強化し、かつ、当該児童の年齢を考慮し、更に、当該児童が社会に復帰し及び社会において建設的な役割を担うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認める。
2. このため、締約国は、国際文書の関連する規定を考慮して、特に次のことを確保する。
 a. いかなる児童も、実行の時に国内法又は国際法により禁じられていなかった作為又は不作為を理由として刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定されないこと。
 b. 刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は、少なくとも次の保障を受けること。
  i. 法律に基づいて有罪とされるまでは無罪と推定されること。
  ii. 速やかにかつ直接に、また、適当な場合には当該児童の父母又は法定保護者を通じてその罪を告げられること並びに防御の準備及び申立てにおいて弁護人その他適当な援助を行う者を持つこと。
  iii. 事案が権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関により法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い及び、特に当該児童の年齢又は境遇を考慮して児童の最善の利益にならないと認められる場合を除くほか、当該児童の父母又は法定保護者の立会いの下に遅滞なく決定されること。
  iv. 供述又は有罪の自白を強要されないこと。不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに対等の条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
  v. 刑法を犯したと認められた場合には、その認定及びその結果科せられた措置について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関によって再審理されること。
  vi. 使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。
  vii. 手続のすべての段階において当該児童の私生活が十分に尊重されること。
3. 締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は認定された児童に特別に適用される法律及び手続の制定並びに当局及び施設の設置を促進するよう努めるものとし、特に、次のことを行う。
 a. その年齢未満の児童は刑法を犯す能力を有しないと推定される最低年齢を設定すること。
 b. 適当なかつ望ましい場合には、人権及び法的保護が十分に尊重されていることを条件として、司法上の手続に訴えることなく当該児童を取り扱う措置をとること。
4. 児童がその福祉に適合し、かつ、その事情及び犯罪の双方に応じた方法で取り扱われることを確保するため、保護、指導及び監督命令、カウンセリング、保護観察、里親委託、教育及び職業訓練計画、施設における養護に代わる他の措置等の種々の処置が利用し得るものとする。
 ここまで紹介してきたなかで、長い条文となっています。
 そして、この条文の説明が最後となります。

 “子ども発”には、次のようでした。
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   第40条「少年司法」 殺人事件でヌレギヌを着せられた少年。
 ① 刑法に違反したと言われたり、追及されたり、また違反したと判断された子どもは、1人1人を大切にする気持ちや1人1人が価値ある存在であると考えていけるようなやり方で扱われる権利を持っています。これは、その子どもが人権や基本的自由を大切にし、子どもの年令や、子どもがよりよい社会をつくっていくことに貢献するよう考えたやり方です。
② 締約国は、この目的のため、外国との取り決めに気を配りながり、とくに次のことが守られるようにします。
 (a) 何かをした時に、それが国内法・国際法で禁止されていなければ、その後法律が変わったとしても、それを理由に、刑法に違反したと言われたり、追及されたり、違反したと判断されてはいけません。
 (b) 刑法に違反したと言われたり、追及されたりした子どもは、少なくとも次の保障を受けます。
 (i) 法律に従って有罪だと証明されるまでは、無罪だと考えて扱われること。
 (ii) 自分がどんな犯罪をしたと言われているかを、すぐに、そして直接に、適当な時には親か親代わりの人を通して伝えられること。自分を守るためのものを準備し提出する時に、法律や他の良い方法で手助けを受けること。
 (iii) 法律で判断をまかされ、独立した公平な裁判所などの機関が、法律にしたがって子どもを公平に調べいろいろな決定をするとき、弁護士や援助をする人、また親や親代わりの人が立ち会って、速く決定をされること、ただし、子どもの年令や状況によっては、親や親代わりの人は立ち合いません。
 (iv) 無理やり証言させられたり自白させられたりしないこと。自分に不利な証人に質問したり、質問を受けさせたりすること。平等に自分のための証人を出席させ質問すること。
 (v) 刑法に違反したと決定された時には、この決定やその結果行われることが、独立した公平な、上級の裁判所など法律で判断をまかされた機関によって、法律にもとづき、もう1度調べ直されること。
 (vi) 通訳を必要とする場合には無料でつけること。
 (vii) こうした手続きの間、ずっと、プライバシーが十分に大切にされること。
③ 刑法に違反したと言われたり、追及されたり、また違反したと判断された時、特に子どもに対してあてはまる法律や手続、機関や施設を作っていくように努力します。その中でも特に次のことに努力します。
 (a) 刑法に違反する能力がないとする年令を決めること。
 (b) 人権や法律による保障を十分に大切にすることを条件に、子どものためになるならいつでもこうした子どもを裁判せずに取扱えるようにすること。
④ 子どもの犯罪に、処分を与える時は、犯罪の性質や今の子どもの状況を考え、特に子どもの幸せのためになる方法を用います。その子どもの幸せのためになり、また子どもの今いる状況ややった犯罪に合った方法で子どもを取扱えるようにするために、締約国はそうした子どもをケアしたり、子どもを指導し監督するように命令を出したり、カウンセリングさせたり、子どもを保護監察処分にしたり、親代わりの人に預けたり、教育や仕事のための訓練のプロ
グラムをやらせたりします。その他、子どもの処分は国の施設の中でなくとも行なえるようにします。
*自分を守るためのもの……自分に有利な証拠や、自分を弁護してくれる弁護士などのことをさしています。
*上級裁判所裁判所が決めたことを、間違いがないかどうかもう一回調べる裁判所のことです。日本では、地方裁判所の上級裁判所として高等裁判所、その上級裁判所として最高裁判所があります。
*刑法に違反する能力……刑法に違反して犯罪を犯すのが悪いことだとわかる能力のことです。この能力がない人を罰することはできません。
*保護監察処分……犯罪を犯した人を立ち直らせるために、捕まえておかずに社会の中で生活させながら、指導や援助を行うこと。
 何年か前、カギのついていない自転車に乗っていて、警官に呼び止められたことがある。いきなり「それ、誰の?」と聞くので「ぼくのですが」と答えると、「ちよつと待ってな」と言い、いろいろ調べ始めた。結局、自分のだということがはっきり証明できたので「気つけて帰りゃ」と言われて帰ったものの、疑われる時はなかなか簡単に疑われるものだ。

 最近、ある殺人事件でヌレギヌを着せられ、犯人にされかかった少年と話す機会があった。その人も、ただ事件のしばらく後に現場近くにいたというだけで疑われたのだった。
 一応「任意同行」ということで警察に連れていかれたはずなのに、帰ろうと思っても帰してもらえない。しかも、取調べの刑事は完全に「クロ」という前提で話を進める。調書が実は何も言わない内からおおかた出来上がっていて、それに沿ったことを言わないと、調書に何も書いてくれないという。昼すぎから夜までぶっ通しで調べられ、腹は減るし体は疲れきるしといった状態で、「やったんだろ?」と何度も言われ、共犯者とされた友達2人も自白したと聞かされて(本当はデタラメ)、自白すれば帰してくれるというし“もうどうでもいいや” 的にウソの自白をしてしまったという。もちろん、自白して帰してくれたかといえばそんなことはなく、留置場に入れられあとは犯人扱いされてしまったわけだ。
第40条0212。 もっと困ったことに、接見した弁護士まで「クロ」という前提で「どうすれば軽い罪ですむか」ということばかり言っていたそうだ。
 結局この事件は良心的な弁護士の人たちのお蔭で無罪が証明されたのだけれど、そういう警察のズルい取調べ方はまだまだあって、それにのせられて犯罪者に仕立て上げられる人も多い。
 まして少年法では、少年が疑われた場合、大人なら当然認められている権利がなかったりする、例えば、大人なら必ず弁護人がつく(本人がつけられなければ国がつける)のが、子どもだとそうはならない。弁護人じゃなく、「付添人」しかつけられない。
(略)
 でも、考えてみると、子どもにこそ弁護人は必要なんちゃうか、と思う。法律知識からしても、検事との駆け引きにしても、大人の場合と比べて疑われる側が不利なのは目に見えてる。
(略)
 そのへんのことをなくすために、この条文はある。いらぬ苦痛を受けさせられぬように、そしていつでも助け船を出してもらえるように、たった一つの罪のために社会から放り出されることがないように、というようなことだ。
 ちなみにこの条の③では、裁判所の判断を受けるのは手続きもややこしいし時間もいくらかかかるから、細かい事件の場合はいちいち裁判所にまわさなくてもすむような扱い方があった方がいい、ということを言ってる。でも、今の日本では、被疑者に対する扱いについてはさっきも書いた通りで、警察にはあまり信用がおけないので、ちょっと手放しで喜ベない。必ずしも裁判所を通さなくてよい、となると、へタをするとますます密室の中で事が進むようになって、いい加減な処分をされることだってありうるからだ。警察がもっと信頼される機関になるか、信頼のおける他の機関が処分を決めるようにするか、どっちかがないと、今のままではちょっと問題アリだ。
 条約がいつもいい効果を及ぼすとは限らない、ということの一つの例でもある。
*任意同行……捜査機関が、強制でなく、本人がOKした上で取調べのために連れて行くことを言う。イヤなら途中で帰っても良いタテマ エであるのは言うまでもない。
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 「子どもの権利条約 (児童の権利に関する条約)」は、第54条までありますが、本書やunicefのガイドブックでは、ここまででした。
子どもの権利条約0212。

【関連】
  ◇子どもの権利条約(UNICEF)
  ◇子どもの権利条約(日本ユニセフ協会)

 注)これまでの記事は〈タグ「権利条約」〉で
 注2)掲載しているイラストは、日本ユニセフ協会「子どもの権利条約 関連資料」より借用しています。
 《参考》◇「先人に学ぶ」に学んで(リンク集)(2024/09/30)  
タグ :権利条約


Posted by ガク爺 at 17:30Comments(0)教育