2025年02月22日

『笑う森』(萩原浩・著)

豚まん0222。 帯に「5歳児行方不明になった、生死不明の一週間、神森で、何が起きていたのか」の言葉が気になって手にした『笑う森』(新潮社・刊)です。
 5歳の男児が神森で行方不明になった。
 同じ一週間、4人の男女も森に迷い込んでいた。拭えない罪を背負う彼らの真実と贖罪。

 原生林で5歳のASD児が行方不明になった。1週間後無事に保護されるが「クマさんが助けてくれた」と語るのみで全容を把握できない。バッシングに遭う母のため義弟が懸命に調査し、4人の男女と一緒にいたことは判明するが空白の時間は完全に埋まらない。
 森での邂逅が導く未来とは。希望と再生に溢れた荻原ワールド真骨頂。
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笑う森 [ 荻原 浩 ]
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 本書を手にしたものの、その厚さ(451ページ)に「読み切れるだろうか…」と不安になりましたが、物語に引き込まれ、どんどん読み進みました。
 読み終えて、本書が“読書メーターOF THE YEAR2024”の一冊に選出されていたことを知りました。納得の一冊です。

 表紙は暗い森が描かれ、大木の前に立つ子供、その大木に隠れるように題名が書かれています。
 中表紙には、ミニカーの列が描かれています。このミニカーと表紙の子供は…。


 物語は、「小樹海」とネットで呼ばれている神森で行方不明となった5歳の男児を、下森消防団団員の田村武志が探す場面から始まります。
 行方不明から一週間が過ぎた11月19日、「合体樹」の根と根が交錯してできた空洞で、5歳児を武志が発見しました。
 5歳児が一人で一週間を生き抜きました。奇跡です。

新聞0222。 行方不明になっていたのは、自閉症スペクトラム障害と診断されている山崎真人で、定型発達の子供と同じようなコミュニケーションを取ること、行動することが難しい子供です。
 行方不明になった日…。
 深夜、午前0時少し前に「本日の操作はここまでです」と告げられます…。
 二日目…。
 五日目…。
 岬(母親)は些細な情報でも得たいと見ていたネットに、岬や真人に関する噂が…。


 真人は、一週間過ぎて発見されたのに、衰弱はなく、食べ物を摂っていたようです。
 何を食べていたの?
「ごはん、しらないおかし」
 誰にもらったの、と聞くと、
「くまさん」
 “くまさん”とは何? 誰? …

 神森に真人が行方不明になっていた一週間、神森に他の人、ものがいました。
 死体を遺棄しにやって来た美那…
 YouTubチャンネルでソロキャンプを配信している戸村拓馬…
 組の上納金を盗み、逃走中の谷島…
 神森を死場所と定めた畠山理実…
 そして、森の…

 彼らが、それぞれ真人と遭遇していました。
 そのとき…。


 真人の1週間、何があったのか。それを、母親の岬、叔父の冬也が追っていきます。そこにYouTuberの拓馬が加わり、明らかになったのは…。

 子供の行方不明から始まり、殺人や暴力団、いじめ、自殺…と事件(?)が続きますが、登場人物の言葉や行動にくすっとし、純真な真人の言葉と行動そして成長に、心に優しい風が吹き込むような気持がしました。
 厚い本ですが、その文量を気にせず読み切れる物語です。
 みなさん、お薦めです。



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タグ :読書


Posted by ガク爺 at 17:00Comments(0)読書