2025年02月01日
『婚活マエストロ』(宮島未奈・著)
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〈あらすじ〉
40歳の三文ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの中の小さな事務所……どう考えても怪しい。
手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、やけに姿勢のいいスーツ姿の女性・鏡原奈緒子。場違いなほどの美女だが、彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と宣言する。そして生真面目にマイクを握った――そう、彼女は婚活業界では名を知らぬ者はいない〈婚活マエストロ〉だった。
その見事な進行で、参加者は完全にマエストロ・鏡原の掌の上。彼女は何者なのか、なぜこんな会社で働いているのか、〈マエストロ〉ってなに……謎は深まるばかりだが、猪名川は同社のイベントを手伝うことに。65歳以上のシニア向け婚活パーティーから、琵琶湖に向かう婚活バスツアー(クルーズ船「ミシガン」に乗車)まで。これまで結婚に興味のなかった猪名川も、次第に「真面目に婚活するのも悪くないかもしれない」と思い始める。
ものは試しと他社が運営する婚活パーティーを訪れてみると、そこには参加者として席に座る鏡原の姿があった――。
本屋大賞を受賞作、そして2作目とも、成瀬あかりを主人公にして、滋賀県大津市の膳所が舞台の物語でした。
本書は、静岡県浜松市を舞台にしています。そのことについて、「好書好日」のインタビューで、次のように述べています。
――今回の舞台は浜松です。宮島さんは静岡のご出身ですが、浜松ではないんですよね。読んでいて、浜松市が舞台であることは気になりませんでしたが、人気の“成瀬”の愛する滋賀県から離れて大丈夫かと思いましたが、途中で“琵琶湖周遊観光船の「ミシガン号」”が登場し、安心するような気分になりました。
そうです。浜松は行ったことなくて。「ミシガン」に行くに当たって日帰りできる距離を考えた時に静岡になったんです。そしてある程度、規模感のある都市じゃないと人が集まらないと思ったので、人口が多めの静岡県浜松市にしました。でも実際に静岡の人から「違和感がなかった」と言って頂いたのでよかったです。静岡の人たちもすごく喜んで下さってますし。
「ミシガン」があって、舞台を選んでいたそうです。流石です。
主人公・猪名川健人、その数少ない友人、そして同級生、取材先の婚活会社の社長、そこで「婚活マエストロ」と呼ばれる鏡原奈緒子、婚活パーティーの参加者…
登場する人々が、「こんな人いるよな…」と親しみがあり、そして個性的です。
婚活に参加したくなったり、浜松市に行ってみたくなったり…。
第1話から第6話まで、読み始めたら止まらない作品でした。楽しく読み終えました。
お薦めの一冊です。
目次
第1話 婚活初心者
第2話 婚活傍観者
第3話 婚活旅行者
第4話 婚活探究者
第5話 婚活運営者
第6話 婚活主催者
【関連】
◇宮島未奈 (@muumemo)( X )
◇【祝・本屋大賞! 宮島未奈最新作・全文無料公開中】「婚活マエストロ」第一話(WEB別冊文藝春秋)
◇宮島未奈さん「婚活マエストロ」インタビュー 本屋大賞「成瀬」後第1作、40代の実感を反映(好書好日)
◇『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈・著)(2024/03/31 集団「Emication」)
◇『成瀬は信じた道をいく』(宮島未菜・著)(2024/04/20 集団「Emication」)
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Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)
│読書
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