2023年07月23日
大暑。 『環境省武装機動隊EDRA』(斉藤詠一・著)
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梅雨明けの時季で、夏の「土用」の頃です。いよいよ本格的な「夏」の到来する頃です。
“地球温暖化”への懸念が言われ、その環境変化、気象変動を受けた気温上昇の抑制目標を掲げ、世界各国が取り組みを続けています。
七夕や夏至などの夜に照明を消して空を見上げ、地球温暖化について考えるイベントが行われるのも、啓発活動の一つです。
世界気象機関(WMO)の報告によると、今後3年以内に1.5度の目標値を初めて上回る可能性が確実になようです。
また、アメリカの国立環境予測センターは、7月に入って“地球の1日単位の平均気温”が連日、史上最高を更新したとの発表がありました。
こうした地球温暖化の引き起こした“大異変”後を描いた『環境省武装機動隊EDRA』(実業之日本社・刊)です。
二〇三八年、急激な温暖化で海面が上昇し、沿岸都市が水没。15年後の“2038年”、自然破壊による大異変が発生し、急激な温暖化により海面が上昇し、沿岸域は水没しました。世界が一変し、人々の暮らしが変わります。
世界は、自然環境の保護が最大の正義とされ、守るためなら武力行使をいとわなくなっていた。
ある日、コンテナ船がジャックされた。要求に従わなければ爆弾が炸裂。船の燃料が流出し、深刻な環境汚染を起こすかもしれない。
それ防ぐために特殊部隊が投入され、迅速に事態は終息したかに思われた。
しかし、その影には巨大組織の陰謀が隠され、人類の脅威が迫っていた!
江戸川乱歩賞作家が描く、近未来デストピア・ミステリー
世界の80億人が住む土地、生活を支える食糧、水、エネルギーを巡って紛争が勃発し、核戦争に発展してしまいます。
人が亡くなり人口が減少し、核戦争による気温低下で異変は収まっていますが、これまでと大きく“価値観”が変わっています。
自然環境保護が最大の正義環境省に設置されたのは「司法捜査権」を持ち、自然破壊を食い止めるため、武装組織「武装機動隊EDRA」を国内、他国にも部隊を派遣して活動します。
自然環境を保護しなくては、世界は維持できないが…。
武装した組織に頼るしかないのか…。
自然保護を掲げながら暗躍する組織と人が…。
“正義”って何だろう…。
沿岸部が水没し、東京都心にあった施設は使用できず、国の省庁が立川に移っていました。成田、羽田の空港も使えず、基地の飛行場が使われています。
こうした変化が詳しく描かれていましたが、地名から“思い浮かぶ今の姿”が田舎者の自分に少なく、著者の“臨場感ある丁寧な記述”を読み取れずに申し訳ない気がしました。
2038年、中部、関西、九州は、どうなっているのか。
さらに、世界は、どうなっているのか。
さらに想像の膨らむミステリーでした。そして、この世界に進まない“今の行動”を考えました。
とても面白い内容、展開、そして結末でした。
読書メモより
○ また陥りかけた暗い気分を振り払い、SNSの画面に戻る。
(略) もちろん、議論自体はよいことだと宗矢も思っている。それでも、ある種の人々は自らの信じる正義のみを声高に主張し、意見が異なる者の揚げ足を取り、世界を二色に分けることに躍起になっていた。小学生の宗矢がネットの世界を覗きはじめたのやいわゆるコロナ禍の時代だったが、その頃と大して変わらない。
○ 振り返る過去などない。私的な感傷に長々と身を委ねる贅沢が、今の自分に許されるはずもないのだ、
(略) 怜は、部下へと声を張り上げた。
「では行くぞ。NCEFチームA!」
○ 同じ頃、ウクライナでの戦争をきっかけに、一時期軌道に乗りかけていた再生可能エネルギーへの転換はペースダウンを余儀なくされていた。
(略) たしかにそうしなければ、救えなかった命もあったことだろう。だが、それが負のスパイラルに陥る最後の一押しとなった。
○ 衣食足りて礼節を知る、という言葉は真理だった。衣食が大幅に不足するようになった世界は、数百年の時を遡ったかのごとく文明を後退させはじめた。
○ セレクターを操作し、低高度を直線飛行させるダイレクトアタックモードを選択。照準器の中で、T-80の砲がこちらへと角度を変えているのだわかる。砲口が、ほぼ真円の形に見えた。あと数秒で、敵は照準を固定して撃ってくるはずだ。
○ 「アントロポセン」
老人が呟き、悠真は軽く驚いた顔をした。その言葉は、宗矢も知っている。
(略)「まあ、そのうちに人間は滅びちまうかもしれないけど、地球は人間がいなくなったところでたぶん痛くもかゆくもないよ。人間の言う環境保護ってのは、(略)
○ 「念のため、各機が搭載する爆弾のうち一発は、サーモバリック弾としてもらってください」
○ 「お前の、水陸機動団での水中訓練の話を思い出したんだ。(略)」
目次
序章
第一章 東京特別市
第二章 旧ロシア連邦・サハ共和国
第三章 房総島
第四章 下北原生自然環境保全区域
第五章 津軽要塞
終章
【関連】
◇斉藤詠一(note)
◇JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
◇気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(気象庁)
【「梅雨」関連情報】
◇令和5年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)(気象庁)
◇梅雨入り梅雨明け予想・状況 2023(日本気象協会 tenki.jp)
◇梅雨入り・梅雨明け情報【2023】(ウェザーニュース)
◇2023年(令和5年) 梅雨入り・梅雨明けの状況(お天気.com)
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