2024年03月10日
『一年一組 せんせいあのね こどものつぶやきセレクション』(鹿島和夫・選/ヨシタケシンスケ・絵)
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明日(3.11)を前に、メディアで東日本大震災に関わる話題を多く見るようになりました。
Business Insider Japan に、震災後に築かれた巨大な防潮堤に絵を描く壁画プロジェクト「海岸線の美術館」を取り上げた記事がありました。
→記事はこちら
防潮堤を目の前にすると、その大きさに圧倒されます。
「大津波から守る」として建設が進んだ防潮堤とは、何のためなのか。
先人が津波石や津波記憶石に託したことは…。
何事も逆戻りはできません。“より好ましい未来(あす)”に向かうのは、どのようにしたときか。
いろいろ思う「あの時」の前日です。
図書館の書架で“懐かしいタイトル”を見かけました。
黄色い表紙、裏表紙に、ヨシタケシンスケさんのイラスト(絵)が描かれています。
著者ではなく選者が鹿島和夫さんとなっている『一年一組 せんせいあのね こどものつぶやきセレクション』(理論社・刊)です。
子供の頃に、使っていた(書いていた)方がみえるかもしれません。名前は聞いたことがあるかもしれません。
昔々(?)、学校教育で「生活綴方運動」が広がり、子供達がさまざまな作文(文章)を残しました。
その指導の中で、1980(昭和50)年代に、「先生に“あのね”とお話するように書きましょう」と、小学校低学年が作文用紙の「せんせい、あのね…」に続けて、自然に書き始めることができました。
当時の子供が、普段のことを「あのね帳、あのねノート」で日記として綴っていました。
その子供達の「あのね帳(日記のーろ)」から生まれた図書『一年一組 せんせいあのね』が話題となり、多くの学校で指導に生かされるようになりました。
本書は、それらの図書の作文から54篇が掲載され、それぞれにイラストが付けられています。右ページの作文、左ページのイラスト、その見開きで1作品です。
鹿島和夫さんと鹿島さんが担任した小学校一年生たちとの、いわば交換日記であった「あのね帳」から、54篇のつぶやきをセレクト。
笑いをさそうもの、胸をうつもの…こどもたちから生まれた生のことばがヨシタケシンスケさんの絵とタッグを組み、新たに心をゆさぶる。
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教員不足、採用試験の受験者減少などがニュースで大きく取り上げられた頃、ある新聞のコラムが、
せんせいあのね「わたしのせんせいはてつぼうを/10かいさせます/せんせいは/いっかいもやりません」。小学1年生の鋭い指摘に担任だった鹿島和夫さんは苦笑しただろう。家で詩を書いて先生に渡す「あのね帳」は子どもが心を開いてゆく窓のよう…(略)初めて教壇に立つ人もいる。「せんせいがんばれ」。あえて教職に進む人たちに敬意とエールを込めて。と、昭和の「せんせいあのね」の作文から始め、あのね帳から生まれた“つながり”を引き、新しく教職に就く方へエールを送っていました。
そうした旧くて新しい「かろやかで ふかく のびやかで こまやかな 一年生の ことばたち」を楽しんでください。
そして、作文から頭に浮かんだ「絵(イメージ)」と、ヨシタケさんの「イラスト」を比べ、子供の言葉たちを改めて味わってください。
一年生の“素敵な世界”に出会えます。
【関連;これまで紹介した本・絵本から】
◇『日々臆測』(ヨシタケシンスケ・著)(2023/04/19 集団「Emication」)
◇『みらいめがね』(荻上チキ・ヨシタケシンスケ・著)(2022/11/19 集団「Emication」)
◇『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』(ヨシタケシンスケ・著)(2022/09/04 集団「Emication」)
◇『その本は』(ヨシタケシンスケ・著/又吉直樹・著)(2022/09/02 集団「Emication」)
◇『あんなに あんなに』(ヨシタケシンスケ・著)(2021/11/23 集団「Emication」)
*検索 「ヨシタケシンスケ」 集団「Emication」
Posted by ガク爺 at 17:00│Comments(0)
│読書
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